• ラプンツェル ラプンツェル 
    髪をおろしておくれ

    このセリフで有名なグリム童話「ラプンツェル」
    あらすじはよくご存知と思いますが かいつまんで言えば

    「妊娠した妻がどうしてもとせがむので 夫は魔女の庭からラプンツェル(ノヂシャ)を盗む。 それが魔女に見つかり 代わりに生まれた女の子を取り上げられてしまう。

  • 髪の長い美しい少女に成長した女の子(ラプンツェル)が 12歳になったとき 魔女は森の中の塔に彼女を閉じ込める。 その塔は出入り口がなく てっぺんに小窓が一つあるだけ。 魔女は下から声をかけて 彼女の長い髪をおろさせ それをつたって出入りしていた。 2,3年後 彼女の歌声に惹かれて偶然この様子を見た王子が 好奇心にかられ 魔女のふりをして 塔に上って来る。 二人はすぐに恋仲に。

    やがて ことは発覚し 娘は長い髪を切られて砂漠に棄てられる。何も知らずよじ登ってきた王子は 魔女に脅され塔から飛び降りた拍子に失明して 森の中をさまよう。

    数年後 砂漠で再会した二人。 ラプンツェルは男女の双生児の母となっていた。彼女の涙で王子の目も治り 二人は帰国して いつまでも仲良く暮らした。魔女がどうなったかは わからない。」
  • …… …… ……

     ラプンツェルの両親ですが この二人の存在はどうにも疑わしいところ。 この「魔女」こそ 娘の本当の母ではなかったか と思われます。 「魔女」という設定ですが 実はたいした魔法も使わず 魔女らしいところが全然ない。 意地悪のしかたも不徹底。  

     不始末をしでかした娘を 殺す。 殺さぬまでも家から追い出すなどは 中世近世はもちろん 近代になってもままある話でした。 そういう娘さんが 公衆の面前で髪をじょきじょき切られて引き回され 辱めを受けたことも 1944年8月のパリ解放以降フランス各地でありましたね。
  • 「名誉(!)殺人」が今も堂々と行われている地域だって。  

    これは支配傾向が強く 「娘を守る」ことが固定観念になってしまって 自分のしていることが虐待であることにも気づかない 哀れにも迷惑な母親です。 そして そこには彼女の復讐も……おっと先を急いではなりません。

     しかし 実の母とすると 「子供と家庭のメルヘン」にふさわしくないので 魔女が隣人夫婦から奪った娘ということにしたのでしょう。 だって 夫婦は なんの葛藤もためらいもなく あっさり娘を引き渡して(菜っ葉と引き換えに!) しかもその後 いっさい登場しないのです。 

     おとぎばなしのパターンなら ラストで 魔女は罰せられ 実の両親は手厚く迎えられるはず。 この夫婦は娘を魔女に与える装置に過ぎなかったのでした。

     子供を要求した魔女は こう言います。

    「その子は幸福にしてやろう。 わしは、 おかあさんのようにその子のめんどうを見てやるよ。」

     <つづく>

     ラプンツェル(ノヂシャ)

 

  • 訳文は 植田敏郎訳 新潮文庫「グリム童話集 1」による
  • 画像はラプンツェル(ノヂシャ)